問題
1)企業の負債の市場価値が1000万ドル減少することは、その企業にとってよいことか、それとも悪いことか。それは何故か?
2)もしあなたが株主である場合、企業の資産の市場価値が1000万ドル増加するのと、その企業の市場価値が1000万ドル減少するのとでは、どちらがよいか?それはなぜか?
自分) 1)負債の市場価値が1000万ドル減少するという場合、資産の額が一定であれば、資本の額が1000万ドル上昇することを意味すると考えられる。企業にとってよいことである。
2)資産が1000万ドル増加する場合と、負債が1000万ドル減少する場合とを比較すると
負債が1000万ドル減少した場合には資産額が一定であるので資産が1000万ドル増加する場合に比べ自己資本比率が高くなると思われる。そこで負債が1000万ドル減少する場合のほうが企業にとって有利に働くと考える。
本の解説)1)企業にとってよいことである。なぜなら、その企業はそのすべての負債を1000万ドル少ないコストで返済できるからである。
あるいは企業が現在の負債を返済しないことを選択するのであれば、同じ額面の新しい負債よりも、年間の負担は小さいはずである。
言い換えれば、株主資本の市場価値は資産の市場価値から負債の市場価値を差し引いたものとなる。
したがって、負債の市場価値が1000万ドル減少すれば、株主資本の市場価値が同額だけ増加することになる。
2)筆者の意見では、2つの事象に違いはないと考える。
なぜならどちらの場合も株主資本の市場価値が1000万ドル増加するからである。
唯一の違いは、資産価値の増加はおそらく経営改善によるものであり、一方負債の減少は通常、その企業の力の及ばない市場の動向によるものである。
しかし、企業の富への影響という意味では、二つの事象に違いはない。
(おまけ)
資産の市場価値の増加と負債の市場価値の減少は理論的には同じだが、これが現実の世界で生じた場合、経営者としてはどう考えるだろうか?
個人的には、資産の市場価値の増加は気持ちを前向きにし、負債の市場価値の減少は気持ちを後ろ向きにすると思われる。
何故なら資産の市場価値が増加した場合には、含み益がうまれるわけで、その資産が販売されることによりより利益が出やすくなる。その分の利益で将来の投資をしようと考える。
一方で負債の市場価値が減少した場合には、市場での借り入れの金利が上昇していることを意味するので、現在の借入の返済期日が来て、返済がはじまった場合、将来的に支払利息の上昇を予想させる。すると将来の利益の減少がかんがえられるので、将来への投資を縮小する。
合理的思考と実際に経営者の感じる感覚との間にはずれがある場合が多い。
合理的に考えることができればチャンスをつかむことができる。
次回の問題
以下の各取引が企業の財務諸表に与える影響を簡単に説明せよ(取引の前後で資産が負債と株主資本の合計に等しくなければならないことに留意せよ)
1)1000万ドルの新しい建物を購入し、20%の手持ち現金で、80%を銀行の借入で資金調達。
2)1000万ドルの新しい建物を現金で購入
3)10万ドルの商品の現金販売
4)10万ドルの商品の信用販売
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