【問題】
アナログデバイス(ADI)社は、マサチューセッツ州のノーウッドにある半導体メーカーである。アナログ社と類似した企業5社の情報を使い1985年12月31日時点のADI社の価値を評価せよ。
アナログデバイス社
純売上高(百万ドル) 119.3
発行済み普通株式数 114.5
EBIT(百万ドル) 163.6
税率 25%
株主資本の簿価(百万ドル) 656.0
有利子負債の簿価(百万ドル) 82.4
類似公開企業との対比によるアナログデバイス社の評価(1985年12月31日)
アナログ社 バーブラウ社 リニアテ社 マキシム社 シリコニ社 モトローラ社
類似企業とアナログデバイス
社の比較リスク成長率リターン
ROIC 16.6 15.0 25.5 37.9 27.4 12.9
ROE 18.2 16.3 25.5 37.9 26.8 16.1
負債対資産比率(%)34.5 29.0 16.9 22.1 56.6 51.5
5年間の売上高成長 14.3 9.9 32.2 43.1 14.0 20.3
価値の指標
PER 14.2 25.8 18.7 15.2 18.9
企業の市場価値÷[EBIT×(1-税率)] 16.3 26.6 19.4 18.3 24.2
株主資本の市場価値÷株主資本 2.3 6.6 7.1 4.1 3.0
企業の市場価値÷企業の簿価(倍) 1.9 5.6 5.7 2.3 2.0
【自分の解答】
ROIC 16.6も安定的な数字と考えられる
ROE 18.2%問題ない数字である、突出したものではない
負債対資産比率 34.5と約3割が負債というのも問題はない、安定経営であるといえる
5年間の売上高成長率 は、14.3%低くはないが突出した数字ではない 安定成長と考えられる
全般的に他者と比べ安定的な会社であるといえる。
【本の解答】
以下は筆者の予想である。
ROE、ROIC、5年間の売上高成長率に関して、アナログデバイス(ADI)社の順位は真ん中であるが、
その数値は平均若干下回っている。
いずれの企業も財務レバレッジはほどほどであり、ADI社も同様である。
ADI社の売上高成長率が平均以下であることは、利益を使った2つの指標が類似企業の平均値よりも幾分低いものになるはずであることを示している。
サンプル企業の平均を5~15%下回るのが適当であろう。
ADI社のROICとROEが平均を幾分下回ることは、残り2つの資産をベースにした指標の値が、やはり類似企業の平均を下回ることになるはずであることを示唆している。
ここでは、サンプル企業の平均を約10%下回るということにした。
以下が筆者が予想するADI社の価値指標である。
PER 18.0倍
企業の市場価値÷[EBIT×(1-税率)] 19.8倍
株主資本の市場価値÷株主資本の簿価 4.2倍
企業の市場価値÷企業の簿価 3.2倍
各々の指標から導かれるADI社の株価は以下のとおりである。
PER 18.77ドル
企業の市場価値÷[EBIT×(1-税率)] 20.50ドル
株主資本の市場価値÷株主資本の簿価 24.06ドル
企業の市場価値÷企業の簿価 19.92ドル
筆者によるADI社の1995年末の株価の推定値は20.50ドルであrが実際の株価は24.88ドルであった。つまり、この予想は約18%低かったということになる。
【次回の問題】
ついにこの本の最終問題である。
メイフェアモード社の4年間の予測は次のとおりである。
2002 2003 2004 2005
フリーキャッシュフロー -85 -32 62 66
1)2001年末におけるメイフェア者のFMVを推定せよ。2005年以降は、EBITは2億1000万ドルを維持し、減価償却と設備投資は同額で推移し、運転資本の増減はない。WACCは14%で、税率は40%である。
2)発行済株式数が5000万株 、有利子負債の市場価値が3億ドルとして株価を推定せよ。
3)別のターミナルバリューを考える。下記の場合におけるメイフェア社の株価を推定せよ。
①2002~2005年のフリーキャッシュフローは上記と同じ
②EBITは2005年で2億1000万ドルで、年率4%で永続的に成長sうる。
③EBITの永続的な成長を支えるために2006年の設備投資は減価償却費を2000万ドル上回り、
その増加額は年率4%で永続的に成長しうる。
④同様に2006年の運転資本は1000万ドルの増加となり、その増加額は年率4%で永続的に成長する。
4)第3のターミナルバリューを考える。2001年末のメイフェア社の適正な株価を推定せよ。
①2002年~2005年のフリーキャッシュフローは上記と同じ。
②有利子負債の市場価値は2005年までに一定で3億ドルで有利子負債の利率は10%である。
③2005年末にメイフェア社は成熟段階に入り、
株式は2005年度の純利益の一般的なPERで取引されるとする。この際、PERは24倍を使う。
【おまけ】
ついにファイナンシャルマネジメントも最終問題となった。最後の7章 8章 9章は聞き慣れない内容が多かったので、無理やり通り過ぎてきたというかんじではあるが、
ファイナンシャルマネジメントという本をとりあえず制覇できた。 まだ明日が残っているが・・・
3月の下旬から始めたので、3ケ月以上が過ぎ去ってしまった。少年老い易く学成り難し の言葉が身に染みる。
ファイナンスの内容は経営を考えるうえで避けては通れない課題、しばらく時間をおいて、別の本もしくは、ファイナンシャルマネジメントを別の角度から考えてみたい。