第七章 みなみは人事の問題に取り組んだ
「マネージャーの責任」
初戦を翌日に控えた日、みなみはあらためて宮田夕紀の病室を訪れた。
夕紀は言った「この一年、私は本当に感動のし通しだったの。・・・私は本当に多くの喜びと、感動と、それからやりがいと、生きる勇気も、そういろんなものをもらったわ」
「みなみは大したもんだよ」
「大切なのは結果ではないと思うの。甲子園に行けたかいけないか、そのことではないと思っているの。・・・」
その言葉にみなみは「私はマネージャーとして、野球部に成果をあげさせる責任があるわ。野球部を甲子園につれていくことが、私の責任なの」
「大量得点 ミスになれる 勝ち進む」
翌日、ついに夏の大会が開幕した。それが、やがて高校野球に一大旋風を そしてイノベーションを巻き起こす、「程高伝説」の始まりだと気づく者は、誰もいなかった。
実戦経験の少ないことで、接戦になったとき浮足立つのを防ぐためにひとつの戦略を打ち出した。
なるべく大量得点で勝てるよな試合運びをするという方針を打ち出した。
「ミスをおかすこと」も一つの課題だった。ミスに慣れておくことで、無用な緊張を防ごうとしたのだ。
程高は勝ち進んだ 際立った成績ではなかったが勝ち進んでいった。
程高はピッチャーの投球数が少なかった。逆にフォアボールで出塁する率が以上に高かった。
四回戦で私立の強豪校と対戦する。応援にも勇気づけられ、4対0で勝利した。
続く5回戦も勝利すると、程高に注目が集まるようになってきた。準々決勝も勝ち抜いた。
「大きな二つの人事」
試合後マスコミが程高に取材に押しかけた。二階正義がインタビューを一手に受けた。
二つの大きな人事の決定が行われた。
ひとつは二階正義をキャプテンに使命したこと。これはマネジメントが「野球が下手」でもその功績が大きければ評価されることを意味した。
もう一つは朽木文明がレギュラーから外れたことだった。これには彼の強みを最大限に生かすという狙いがあった。ピンチランナーとしての起用を考えたのだ。
足の速い朽木がピンチランナーとして塁にでることは、相手ピッチャーにとって大変なプレッシャーだった。そのことは準々決勝で大きな成果を上げた。
一塁にでた、朽木がリードすると応援席は「イチニーサン」と歩数を全員で唱和した。このことが、相手ピッチャーへのプレッシャーを増幅した。
「祐之助を使うべきか?」
続いて準決勝が行われた。私立の強豪校で、九回裏まで1対0と程高リードながら、接戦となった。
先頭バッターを打ち取ったが、次のバッターのショートゴロをショートの祐之助がトンネルをした。
次のバッターの打ったボールもショートに飛んだ、ゲッツーで試合終了になるかと思った瞬間 祐之介が二塁に悪送球をした。
次のバッターフライがショート後方に上がった、よろよろとした祐之助はバタンと倒れたその瞬間レフトが見事にバックアップし、2塁を踏んでダブルプレー試合終了だった。
準決勝の後、ミーティングが開かれた。
「明日祐之助は外したほうがいいと思います」 二階正義が言った。文乃も賛同した。
みなみは直感的に祐之助は外すべきではないとおもった。
「たとえ負けることになろうとも、彼の成長を信じて使い続けることが私はマネジメントのすることだと思うんです」
監督の加地は祐之助を使うことを決めた。
携帯電話を見ると着信履歴があった。夕紀からだった
【おまけ】
昨日NHKで、なでしこジャパンの特集をやっていた。
本当によくできた番組で各人の証言を中心に試合中に何があったかを克明に伝えていた。
アメリカ側の証言者として、ワンバックという長身のフォワードの選手が証言してくれていた。
そのワンバックの証言を聞くと徐々にアメリカが追い詰められていったことがよくわかった。
あの勝利の裏には多くのドラマがあったのだ。
「苦しいときは私の背中を見なさい」 澤は日頃から自分の後継者というべき宮間をひっぱて育ててきた。
一点目を取られたとき「あきらめるな」と鼓舞し、チームの雰囲気を変えたのは澤だった。
同点ゴールを入れた宮間は50Mの距離を全力で走ってゴール前に姿を現し同点ゴールを決めた
延長前半 終了間際 ゴールを決められた。
「まだまだやれる これから」とチームを励ましたのは今度は若手選手だった。
延長のハーフタイム 川澄が、FWの自分とMFの丸山のポジションのチェンジを進言した。
あの段階で、決定的な判断が、監督でもキャプテンでもない FWの川澄からでたところがすごい
川澄は自分が後ろに下がることで、アメリカの左サイドの攻撃を防ぎ、攻撃に転じることができる
との判断だった。
延長後半 その判断が効果を出す。敵のボールを川澄がカット、前線にボールを送る。日本は自分たちのペースで
確実にボールを回し シュートへ、キーパーがはじく これがあのコーナーキックへとつながる。
宮間が「ニアへ蹴るよ」と澤と阪口に伝える ここで、支持をだしたのが澤ではなく、宮間であるところが
深い・・・ 今まで引っ張ってきた澤の背中を押したのが、若手の宮間だった。
ゴールが決まった瞬間 アメリカのワンバックは「頭が真っ白になった」「戦う気力が残ってなかった」と語った。
ここで勝負あったのだ。
このストーリーは映画になっても不思議じゃない。素敵なチームのサクセスストーリーだ。
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